保険会社から賠償額を提示された方へ

まずは弁護士に書類を見せましょう

被害者本人が交渉をしている事案では、保険会社が被害者の損害額を計算し、書面で損害賠償額の提示を行ってくるのが通常です。

この提示を受けたときは、必ず弁護士に書類を見せ、提示金額が適正であるのかの判断を受けて下さい。保険会社が被害者本人に提示する賠償額は、裁判で認められる賠償額を大きく下回っていることが多いためです。

弁護士は増額の可能性を診断します

保険会社が賠償額を提示する際に送ってくる書面(賠償額の提示書面)には、治療費・通院交通費などの損害項目ごとに金額が記載されています。

被害者から相談を受けた弁護士は、損害項目ごとに提示額が適正であるのかを判断し、増額の可能性を診断します。

増額の可能性を診断する際は、以下のような点に着目することが多いです。

入通院慰謝料

入通院慰謝料には、自賠責保険の支払基準である「自賠責基準」、保険会社が独自に定めている「任意保険基準」、過去の裁判例などを参考にした「裁判基準」の3つの基準があり、金額は、自賠責基準<任意保険基準<裁判基準となっています。

入通院慰謝料の項目では、保険会社が提示してきた慰謝料額が、裁判基準で算出した慰謝料額とどの程度乖離しているのかを判断することになります。

休業損害

休業損害は、「1日あたりの基礎収入✕休業日数」という計算式で算出しますので、各数値が適正であるのかを判断することとなります。

給与所得者の場合、例えば、過去90日間の給与が計126万円、出勤日数が70日間と休業損害証明書に書かれているときに、1日あたりの基礎収入を126万円÷90日=1万4000円としてよいのか、126万円÷70日=1万8000円とすべきではないのか等をチェックします。

個人事業主の場合は、1日あたりの基礎収入に固定費が含まれているか等をチェックしますが、給与所得者と比較すると検討すべき事項が多いです。

主婦の休業損害は、休業日数について統一された基準がないため、入通院の状況などを考慮して、保険会社の提示額が許容範囲内の金額かどうかを判断することとなります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料について判断をするためには、後遺障害の等級認定判断が適正であるのかを判断する必要があります。この判断を正確に行うためには、後遺障害診断書に加えてカルテ等の医療記録の精査が必要な場合がありますが、相談者からお話を伺うだけでも大まかな判断はできることが多いです。

等級についての判断が固まった後は、保険会社が提示した慰謝料額が裁判基準で算出される慰謝料額とどの程度乖離しているのかを判断することとなります。

赤い本に記載されている後遺障害慰謝料額

第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級
2800万円 2370万円 1990万円 1670万円 1400万円 1180万円 1000万円
第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
830万円 690万円 550万円 420万円 290万円 180万円 110万円
無等級  
原則0円


後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益は、基礎収入✕労働能力喪失率✕労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数という計算式で算出しますが、保険会社が被害者に提示する案は、労働能力喪失率が本来あるべき数値よりも低かったり、労働能力喪失期間が短くなっていることが多いように感じられます。

労働能力喪失率は、労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発第551号)に記載されている以下の数値を参考にして導きますが、これはあくまで参考値にすぎません。

保険会社は、例えば「醜状障害が残っても労働能力に影響はない」といった理屈により、以下よりも低い数値を提案してくることがあるため、その是非を検討する必要があります。

等級 喪失率 等級 喪失率 等級 喪失率
1級 100 / 100 6級 67 / 100 11級 20 / 100
2級 100 / 100 7級 56 / 100 12級 14 / 100
3級 100 / 100 8級 45 / 100 13級 9 / 100
4級 92 / 100 9級 35 / 100 14級 5 / 100
5級 79 / 100 10級 27 / 100  

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数とは、労働能力が失われる期間に対し中間利息の控除という計算を施したもので、労働能力喪失期間が決まれば必然的に数値が決まります。従って、争いが生じるのは労働能力喪失期間を何年にするのかという点です。

経験上、争われる頻度が最も高いのは、むち打ち症の14級9号や12級13号の労働能力喪失期間を何年にするかという問題であり、保険会社からは2年という短い期間が提案されることもあります。

過失割合

過失割合は、「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という、裁判官が中心となって執筆された書籍を参考にして決めるのが原則です。同書籍には、事故類型ごとに基本となる過失割合と修正要素(15km以上の速度違反をすると過失が+10になるなど)が書かれていますので、事故類型の選択と修正要素の適用が適切に行われているのかを判断します。

賠償額の無料診断サービス

当事務所では、保険会社から賠償額の提示を受けた被害者の方を対象として、賠償額の増額がどの程度見込めるのかを無料で診断するサービスをご提供しています。

この診断の際は、各損害項目の検討に加え、認定された後遺障害の等級の適否や、過失割合の相当性の判断もいたします。

お客様が、診断結果を見た上で依頼をされないことも当然可能です。

交渉をご依頼される場合の弁護士費用

当事務所は、お客様が弁護士費用倒れの心配をされずに示談交渉の委任をできるようにするために、保険会社が損害賠償額を提示した後は以下の弁護士費用で事件をお受けしています。

示談交渉の弁護士費用

着手金0円
報酬金(回収額-受任前に保険会社が提示した金額)✕25%

上記の料金表からもご理解いただけるように、示談交渉の結果、損害賠償額が増額しなかった場合は、受任後の弁護士費用を一切いただいていません。

無料診断の際にお持ちいただく資料

賠償額の無料診断サービスをご利用の際は、以下の資料をお持ちいただくことで、弁護士がより有意義な判断をできる可能性が高くなります。これらの書類をお持ちでない方には、状況に応じて何をすべきかを相談時にお伝えいたします。

  1.  保険会社が賠償額を提示する書面
  2.  後遺障害の等級認定結果を知らせる書面(別紙の理由部分を含む)
  3.  後遺障害診断書のコピー
  4.  休業損害証明書のコピー
  5.  源泉徴収票(事故3年前~現在)
  6.  後遺障害診断書以外の診断書

免責証書にサインをするのはお待ち下さい

保険会社は、被害者に送付した賠償額への同意が得られると、免責証書(承諾書)を被害者に送付して署名・捺印を求めてきます(賠償額の提示とともに免責証書を送ってくることもあります。)。

免責証書に署名・捺印をして保険会社に返送をしてしまうと、原則として賠償額を争うことができなくなってしまいます。免責証書を受け取られた方は、すぐに署名・捺印をせず、まずは弁護士に相談をしてください。

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