建物の明渡請求を検討すべきタイミング

結論

当事務所は、賃借人が賃料を滞納し始めた場合、特別な事情や人間関係がない限り、速やかに賃貸借契約を解除したほうが良いと考えています。

ところが裁判所は、信頼関係破壊の法理という理論により、賃借人の債務不履行があった場合でも当事者間の信頼関係が破壊されていないときは契約の解除を認めないという判断をしています(最判昭和39.7.28など)。

滞納期間が短すぎる場合には裁判所が解除の効力を認めてくれない可能性がありますので、建物の賃貸借では、1つの目安として、賃料の滞納額が3ヶ月分に達した時点で契約を解除する内容証明郵便を出すことをおすすめしています。

早期の解除をした方が良い理由

賃料を滞納する賃借人の多くは、賃料を支払うお金がないという理由で滞納に陥っていますので、今後も賃料を支払えない状態が続く可能性が高いと考えられます。

滞納期間中は、賃料を得ることができなかったという損害が生じ続けますので、オーナー様としては、この損害を少しでも軽減するという観点から早期に契約解除をされたほうが良いです。

私が過去に経験した事例の中には、10年に近い賃料を滞納していた事案もありました。これは極端な例ですが、「もう少し様子をみよう」という対応をしているうちに数年が過ぎていたという事例は何件も見たことがありますので、オーナー様には直ちに行動されることを強くすすめております。

1ヶ月分の滞納で契約を解除できる条項について

定形書式の賃貸借契約書の中には、賃料を1ヶ月分でも滞納したら契約を解除できるという条項が設けられていることがあります。

仮に、オーナー様の賃貸借契約書に上記のような条項があったとしても、賃借人が1ヶ月分の賃料しか滞納していない場合には、契約解除の効力は認められないと考えたほうが良いです(最判昭和51.12.17参照)。

なぜならば、1ヶ月分の賃料を滞納しただけでは信頼関係は破壊されていないと評価される可能性が高いためです。

明渡に費用がかかることをどう考えるか

建物の明渡しには多額の費用(こちらを参照)がかかる場合もありますが、だからといって静観をしているだけで事態が好転する可能性は高くありません。

明渡しにかかる費用は、賃貸業を営む上での一種の必要経費だと私は考えています。

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