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費用の支払先
建物明渡請求にかかる費用は、①弁護士に対して支払う費用、②裁判所との関係で必要な費用、③明渡しの催告時・断行時にかかる費用に分けて考えると分かりやすいです。
弁護士に対して支払う費用
依頼をした弁護士に対して支払う着手金と報酬金です。
弁護士によって金額が異なりますが、当事務所の費用はこちらをご覧願います。
裁判所との関係で必要な費用
裁判所との関係では、訴訟提起時の印紙代、訴訟提起時の郵券代(切手代)、執行文付与申立時の印紙代、送達証明申請時の印紙代、強制執行申立時の予納金が必要です。
訴訟提起時の印紙代
訴訟提起時の印紙代は、訴訟物の価額(訴額)によって決まります。
賃貸借契約の終了を理由とする建物の明渡請求訴訟の訴額は、原則として【建物の固定資産税評価額✕2分の1】で計算されます。建物明渡請求とともに未払賃料も請求する場合、未払賃料は附帯請求という扱いを受け、訴額に加算する必要がありません。
訴額と印紙代の対応関係は、以下のようになっています。
訴額 (万円) | 印紙代 (円) | 訴額 (万円) | 印紙代 (円) | 訴額 (万円) | 印紙代 (円) | 訴額 (万円) | 印紙代 (円) |
~10 | 1,000 | ~120 | 11,000 | ~320 | 21,000 | ~550 | 32,000 |
~20 | 2,000 | ~140 | 12,000 | ~340 | 22,000 | ~600 | 34,000 |
~30 | 3,000 | ~160 | 13,000 | ~360 | 23,000 | ~650 | 36,000 |
~40 | 4,000 | ~180 | 14,000 | ~380 | 24,000 | ~700 | 38,000 |
~50 | 5,000 | ~200 | 15,000 | ~400 | 25,000 | ~750 | 40,000 |
~60 | 6,000 | ~220 | 16,000 | ~420 | 26,000 | ~800 | 42,000 |
~70 | 7,000 | ~240 | 17,000 | ~440 | 27,000 | ~850 | 44,000 |
~80 | 8,000 | ~260 | 18,000 | ~460 | 28,000 | ~900 | 46,000 |
~90 | 9,000 | ~280 | 19,000 | ~480 | 29,000 | ~950 | 48,000 |
~100 | 10,000 | ~300 | 20,000 | ~500 | 30,000 | ~1000 | 50,000 |
以上より、例えば固定資産税評価額が250万円の建物の明渡請求と未払賃料90万円とをあわせて請求する場合、訴額は125万円となり、印紙代は1万2000円となります。
通常のマンションや一軒家であれば、印紙代は数万円で足りることが多いです。
訴訟提起時の郵券代
被告1名の場合は約5000円~6000円程度です(裁判所によって異なります。)。
執行文付与申立時の印紙代
300円です。
送達証明申請時の印紙代
被告1名につき150円です。
強制執行申立時の予納金
裁判所により異なりますが、参考までに大阪地方裁判所の予納金額をご紹介いたします。
- 建物明渡しの予納金 6万円
- 動産執行の予納金 3万円
明渡しの催告時・断行時にかかる費用
立会証人の日当
明渡しの催告時と断行時に賃借人等が建物にいない場合、執行官は、証人として相当と認められる者(立会証人)を立ち会わせる必要があります(民事執行法第7条)。
この立会証人に支払う日当は1回あたり5000円程度です。
鍵の業者への支払
明渡しの催告を行うにあたり、オーナー様が合鍵を所持されていないときは、鍵の業者に玄関ドアの解錠をしてもらう必要があります。
また、明渡しの断行が終了した際は、玄関ドアの鍵を交換する必要があります。
鍵の業者への支払額は、鍵の種類や数によって異なりますが、数万円はかかると考えたほうがよいでしょう。
執行補助者への支払
建物明渡しの断行日には、建物内にある目的外動産をダンボールに梱包して運び出し、保管場所までトラックで運搬する必要があります。これらの作業を執行官が直接行うことはできないため、実際には執行補助者と呼ばれる業者の方がこれらの作業を行っています。
執行補助者に対して支払う費用は、主として目的外動産の梱包・運搬・保管・廃棄等にかかる費用のため、目的外動産の種類や量によって金額が変わります。
参考程度に申し上げますと、ワンルームマンションであれば、執行補助者への支払額は20万円~30万円程度ですむ場合もありますが、一軒家になると2倍以上の金額がかかることもあります。
費用の負担者
建物明渡請求の費用のうち金額が大きいものは、弁護士費用と執行補助者の費用です。
これらのうち弁護士費用は、原則としてそもそも賃借人に請求することができません。
一方、執行補助者の費用は法律上、賃借人の負担とされているため(民事執行法第42条1項)、執行費用確定処分の申立をすることで賃借人に対する債務名義を取得することができます(民事執行法第42条4項、民事執行法第22条4号の2)。
しかし、賃料すら支払えなかった賃借人に対し債務名義を取得したところで、実際に執行補助者の費用を回収できる可能性は低いため、賃借人から執行補助者の費用を回収することはあまり期待しないほうが良いです。