離婚を考えている方へ

離婚をすると法的に何が起きるか

これから離婚を考えるにあたっては、まずは離婚によってどのような法的効果が生じるのかを知っておくことが有益です。以下では、離婚の主な法的効果をまとめました。

  • 同居義務、協力義務、扶助義務(民法第752条)がなくなる
  • 再婚ができるようになる(民法第732条の適用がなくなる)
  • 子の親権者が父母の一方に決まる(民法第819条1項、2項)
  • 財産分与の請求をすることができるようになる(民法第768条1項)
  • 戸籍が別々になる(戸籍法第19条1項、3項)
  • 婚姻の際に氏を変えた人は原則として婚姻前の氏に戻る(民法第767条1項)
  • 姻族関係が終了する(民法第728条1項)

離婚をする方法

協議離婚

最もシンプルな離婚方法で、夫婦が離婚届に署名捺印をして市役所に提出をすれば離婚をすることができます。

離婚届には財産分与や養育費などを記入する欄がありません。したがって、理屈上は離婚をすることと、親権者を誰にするのかということさえ合意をすれば、離婚届を完成させて離婚をすることも可能です。

しかし、離婚後は話し合いをすることが難しくなる可能性があるため、財産分与、養育費、年金分割、面会交流を請求する側の人は、これらの点についても協議を行った上で離婚届を作成したほうが良いです。そして、協議内容は、離婚協議書として文書化しておくべきです。

調停離婚

夫婦の協議が整わず離婚届を作成できないときは、まずは家庭裁判所に夫婦関係等調整調停(離婚)の申立を行うこととなります。

調停では、裁判所の仲介のもと離婚の可否や条件を話し合い、離婚の協議がまとまったときは調停調書が作成されます。

この場合、調停調書を市役所(区役所・町村役場)に提出することで離婚が完了しますので、重ねて離婚届を作成する必要はありません。調停調書には、財産分与や養育費の内容も記載されることが多いです。

調停はあくまで話し合いのため、双方の合意がなければ離婚の調停を成立させることはできません。そのため、双方の合意を得られる見込みがなくなった時点で、調停は不成立となり終了します。

裁判離婚

離婚調停が不成立となった場合、訴訟(裁判)を提起して離婚の判決を求めることとなります。

訴訟では、裁判官が判決という形で離婚の可否と条件を強制的に決めてくれます。

そのため、訴訟では配偶者の同意がなくても離婚をすることが可能ですが、その一方で、訴訟で離婚を認めてもらうためには民法第770条1項各号に該当する事由(離婚事由)が存在している必要があります。

実務上、離婚事由としてよく出てくるのは、民法第770条1項1号の「不貞な行為があったとき」と、同5号の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」です。

別居期間が◯年あれば離婚をできるなどと言われているのは、別居が継続することにより「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められるようになるという意味だとご理解下さい。

離婚を認める判決が出たときは、判決書を市役所(区役所・町村役場)に提出することで離婚が完了しますので、重ねて離婚届を作成する必要はありません。

訴訟を提起した後であっても、和解(夫婦間の合意)で離婚をする場合には、離婚事由は必要ありません。

調停をせずに訴訟提起をできるか

調停をしても合意をできる可能性が低い事案では、無駄な調停をせずにいきなり訴訟を提起したいと考える方もおられます。

しかし、離婚の訴えは、家事事件手続法第244条の「人事に関する訴訟事件」に該当するため、家事事件手続法第257条1項の規定により、まず家庭裁判所に家事調停の申立をする必要があります。

調停を申し立てずに訴訟を提起した場合、事件は原則として調停に付されます(家事事件手続法第257条2項)。

「裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるとき」(家事事件手続法第257条2項)には例外的な処理が認められますが、よほどの事情がない限りは調停申立を先行したほうが良いと考えます。

離婚時に決めておくべきこと

離婚をする際は、離婚そのものとは別に以下の事項についても協議をするのが一般的です。協議がまとまったら離婚協議書(場合によっては公正証書)を作成しましょう。

1.親権者

親権者とは、子の監護・教育を行ったり、財産を管理する者です。

離婚をする際は、父母のうちどちらが親権者になるのかということを必ず決める必要があります(民法第819条1項)。

2.養育費

離婚時に親権者となった親は、元配偶者に対し、養育費(子どもの衣食住の費用、教育費、医療費などの費用)を請求することができます。

養育費の金額は、裁判所のHPに掲載されている表(以下「算定表」といいます。)を見ることでおおよその金額を知ることができます。

3.財産分与

財産分与とは、夫婦が離婚をする場合に、婚姻中に夫婦が築いた財産を分配することをいいます。

財産分与の請求は、離婚のときから2年が経過するとできなくなってしまうため(民法第768条2項)、離婚時に内容を決めたほうが良いです。

4.慰謝料

配偶者が不貞行為やDVをしたときは、精神的苦痛を被ったことに対する慰謝料を請求することができます。

5.面会交流

面会交流とは、親権者とならなかった親が、子と定期的に会って遊んだり食事をするなどして交流することをいいます。

面会交流は、養育費を支払うモチベーションとなりうることや、離婚後は親同士で話をするのが難しくなりがちなことから、離婚時に決めておくことが望ましい事項です。

6.年金分割

離婚をした当事者は、離婚時から2年以内に限り、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)の分割を実施機関に対して請求することができます(厚生年金保険法第78条の2の1項)。

会社員や公務員の配偶者など、年金分割を請求できる人は、離婚時に必ず年金分割の按分割合を合意しておくべきです。

別居について

同居義務違反との関係

婚姻中の夫婦には同居義務(民法第752条)があるため、正当な理由がないにもかかわらず家出をするなどして別居をしたときは、同居義務違反を理由に離婚請求や慰謝料請求をされる可能性があります。

しかし、以下のような場合には、別居をすることは同居義務違反にならないと解釈されています。

  • 別居をすることについて配偶者の同意がある場合
  • DVやモラハラから逃れるために別居する場合
  • 会社に命じられて単身赴任する場合
  • 婚姻関係が破綻している状況で別居をする場合

配偶者との離婚を決意していたり、同居を続けることが耐えられないとお考えの事案では、結論として同居義務違反が認められる可能性は高くないことが多いですが、この点についてご不安がある方は弁護士に相談をされると良いと考えます。

同居義務違反の効果

前述のように、同居義務違反が認定された場合、離婚請求や慰謝料請求が認められる可能性があります。

しかし、同居義務を強制執行によって履行させることはできないと考えられているため、裁判で同居義務違反が認められたとしても、同居を強制されることはありません。

別居中で離婚を考えておられる方へ

別居を始めたけれど、まだ離婚の話は出していないという状態のときは、離婚の話を出すべきか否か・離婚の話を出すタイミング・配偶者に提示する条件などを考える必要があります。

この点を考えるにあたっては、感情的な問題に加えて、婚姻費用の支払状況・財産分与の結果予測・親権の獲得見込み・離婚事由の存否などを総合的に考慮する必要があります。

離婚問題の当事者が上記の判断を冷静に行うことは簡単ではありませんので、別居中で離婚について迷っておられる方は、弁護士に状況の分析をしてもらったほうが良いと考えます。

弁護士に相談をするタイミング

最初に結論を言いますと、弁護士への相談は早ければ早いほうが良いです。具体的には、配偶者との同居中であっても離婚をしたいと考えたならば、一度は弁護士に相談をした方が良いです。

離婚事件を有利に進めるために、同居中にしかできないこともありますので、可能な限り早期に相談をされることをおすすめします。

別居を始めた後・離婚の話を出した後・調停が始まった後であっても、弁護士への相談は早いほうが良いということに変わりはありません。

”弁護士への相談が遅れれば遅れるほど有効な選択肢が少なくなっていく”とイメージをしていただけると分かりやすいと思います。

弁護士に相談・依頼をするメリット

弁護士に相談をする最大のメリットは、正確な情報のご提供と交通整理により、相談者様が合理的な判断をできる点にあります。

弁護士に事件の依頼をするメリットには、配偶者と直接話さなくても良くなりストレスから開放される、交渉・調停・訴訟の各場面で弁護士の技術を利用できる、といったものがあります。

離婚事件で処理する内容には、財産分与や養育費のように性質の異なるものがいくつもありますので、より具体的なメリットは各項目のところでご説明いたします。

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